労働トラブルを未然に防ぐ一番の方法は、トラブル原因が外から会社に新しく入ってこないようにするための採用方法の見直しなのですが、あなたの会社が風土として持っている『仕事に対する価値観』を応募学生にはっきり伝えきれていないために、入社後のミスマッチとなり、労働トラブルを起こしたあげくに辞めてしまうのです。

01 仕事に対する価値観とは
たとえば、9:00始業の職場で、上司や先輩のいつもの出社時刻が8:45ならば後輩の自分はそれよりも早く出社すべきと考えるのか、周囲の出社時刻に関わらず8:59に出社すれば規則違反ではないと考えるのか、ということです。

あるいは、部署内で特に担当者が決まっていないが、しかし誰かがやらなくてはいけない庶務的な作業に対して、そもそも自分は担当ではないと全く手を出さないのか、あらたな経験を積むチャンスと積極的に関わろうとするのか、すべきことは認識しているができれば自分の負担を増やしたくないので避けようとするのか、人事評価の対象に「積極性」があればアピール材料として取り組むけれども評価対象に無ければ無視するのか、ということです。

このように、仕事に取り組むときの心構えや社会人としてのマナーといった、大人一人ひとりが持っている考え方が、ここでいう『仕事に対する価値観』です。
昭和の高度経済成長期?バブル期までは、ブランド企業・中小企業問わず、おおむね“滅私奉公”で一致していました。もちろんこれには本音と建て前があり、心の中ではいろいろ思うところがあったはずですが、表立って社内で個人の仕事に対する価値観をアピールすることはありませんでした。

経済全体が右肩上がりの成長をしていたため、ブランド企業だけでなく、中小企業も含めて、組織で一致団結して頑張れば頑張った分だけ会社の業績を上げることができ、その結果、同じ会社に長く勤めれば、社内での地位が上がり(出世)、給料も上がる(年功給)という個人レベルでの成功モデルが約束されていたからです。


当時の社員たちは、個人の価値観にもとづく本音を完全に抑えこみ、会社の求める価値観に全面的に合わせて、例えば、残業や休日出勤の拒否などありえない、転勤には無条件で従う、場合によっては反社会的な業務命令であっても遂行する、といった働き方をして、むしろ、これこそが会社に勤めるサラリーマンの美学である、といった文化さえ創り出してきたのです。

ところが今はこの成功モデルが完全に崩壊しています。

しかしその中でも、ブランド企業はその業界内で勝ち組ですから、まだ社内での本音と建前の区別が十分通用しています。本音を抑えておいた方がまだまだ有利なことを、社員がわかっています。

しかし、経済の成長モデルが失われて会社の業績も低成長の中小企業にとっては、かつてのような社員に約束できるものがないために、本音と建て前の区別が通用せず、ここで社員一人ひとりの仕事に対する価値観が前面に出てしまいます。会社が地位と給料で報いてくれない以上、個人的な価値観にもとづく本音をはっきりと主張して、少しでも自分に有利になるよう自分の身を守らないといけないからです。
募集広告や面接のなかで社長のあなたが語るべきなのは、商売上のビジョンはもちろんですが、それだけでは足りず、ウチは社員に●●な考えで働いてもらっている、君たちにも●●な考えで働いてもらいたい、という内容なのです。

例えば9:00始業の場合

始業時刻だけを伝えるのではなく、ウチの若いモンは30分前から積極的に頑張っているから、ぜひ君も先輩たちに負けないよう頑張ってもらいたい、という内容なのです。

または、ウチの若いモンはとてもスマートで、8:59に出社しても1分後の9:00ちょうどには120%のパフォーマンスで仕事に取り組んでいるから、ぜひ君も先輩たちの加速力や瞬発力に一日でも早く追いついてもらいたい、という内容なのです。

先輩社員の声を伝える場合も、どんな仕事を任されているか、も大切ですが、それだけではなく、日々どんな働き方をしているのか、どのような心構えで仕事に取り組んでいるのか、という内容なのです。


例えば、ワークライフバランスを重視する学生が応募してきた場合

我が社には●○な福利厚生制度があります、ワークライフバランスを重視しています、という伝え方ではなく、入社1年目の社員が●○制度を利用している実際の人数を伝えるべきであり、有給休暇の会社全体の平均取得率ではなく、応募学生が入社後に配属されることになる部署の直近1年間の最も若い社員の取得日数を伝えるべきなのです。


あなたの会社は、応募してきた学生に対して、どのような働き方を求めているのか、そして、入社1年目、5年後、10年後の、仕事に対する心構えの表れとしての日々の働く様子を、フルカラーで見せることができますか?
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